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『テスト終了、お疲れ様でした。』
[システム、通常モードに移行します。] 「約束だ、その機体は私に貸せ。」 「ずいぶん非常識な女だな。それが人に物を頼む態度か?」 「お前のレイヴンランクをランク1位まで上げたのは誰だと思う?」 「私のレイヴンランクを?まさか・・・」 「やっと気づいたか。」 「アグラーヤ、か?」 「そうだ。」 「・・・」 ジノーヴィーは何も言えなくなってしまい、そのまま地下へ向かうリフトへデュアルフェイスを載せた。 そしてその日からデュアルフェイスは、ジノーヴィーとアグラーヤの共用機体となった。 アグラーヤは愛機のジオハーツとデュアルフェイスを使い分け、ジノーヴィーのランクを維持しつつクレスト社に貢献し続けた。 ジノーヴィーも個人で依頼をこなしていったが、クレストに不利な依頼は無意識のうちに避けるようになっていった。 PR |
新型機テスト当日、ジノーヴィーは試験場の地下でデュアルフェイスと大差ない機体に乗り込んでいた。
説明によるとこの機体は、各種内装の性能を大幅に向上させる特殊機構が組み込まれているらしい。 『それでは、テストを開始します。全力で挑んでください。』 デュアルフェイスがリフトで上昇する。リフトが停止した先にあったのもデュアルフェイスだった。 「お前がこの機体の本来の持ち主か。」 女の声の通信が入る。恐らく相手のデュアルフェイスからだ。 「私とお前、どちらがこの機体をうまく扱えるか、見物だな。」 女はそう言うだけ言った後、一方的に通信を切った。 『それでは、開始してください。』 [メインシステム 戦闘モード、起動します。] 戦闘が始まり、双方のデュアルフェイスが動き出す。 グレネードランチャーの火力で押すのがジノーヴィーの戦術だ。 遠距離サイト武器のグレネードランチャーに合わせてFCSも遠距離特化型を選んである。 迷わずグレネードランチャーを選択し、相手に向けて発射する。 しかし発射されたグレネードは狙いを外れ、壁に当たって爆発する。 何度も相手に向かってグレネードを撃ち込むが、相手の読みが鋭く当たらない。 「そんなものか、失望した。」 突然相手のデュアルフェイスから通信が入り、ジノーヴィーは一瞬そっちに気をとられる。 「お前にその機体はもったいない。私が勝ったらその機体は私に貸せ。」 女はまた一方的に通信を切った。 「私の機体を貸せだと?」 操作に再び集中しながらジノーヴィーはそう声を漏らした。 相手の位置を確認していると、相手のデュアルフェイスがグレネードランチャーをパージして接近してくる。 グレネードランチャーをパージした相手のデュアルフェイスのスピードはなかなかのもので、一気に距離を詰められた。 ジノーヴィーは必死に後退しながらグレネードを放つが逃げ切れず、捕捉うまくいかずにグレネードも当たらない。 そしてブレード一閃を食らい、ジノーヴィーのデュアルフェイスに撃破判定が下りる。 |
専属契約警告が届いてから、再び月日が経った。
データベースの依頼受諾履歴はあの日以来、ジノーヴィー本人が受けたものだけになっている。 専属契約疑惑が晴れて追放の恐れもなくなり一息ついていたところ、あるニュースが目に付いた。 [ベイロードシティにミラージュの特殊部隊が侵攻、新人レイヴンとデュアルフェイスの迎撃により撃退。] このような依頼を請けた覚えはない。データベースを確認する。 やはりあった、ジノーヴィー本人の受けた覚えのないクレスト社の依頼。 ジノーヴィーは頭を抱え込む。 クレスト社がデュアルフェイスを自由に扱える以上、成す術がなかった。 そんな折、クレスト社から依頼が入った。 依頼内容は、新型機のテストに協力して欲しいとのことだ。 だが資料の機体構成はデュアルフェイスとほとんど同じだ。 疑問を感じながらも他に依頼がなかったこともあり、その依頼を受諾した。 |
思い立ったジノーヴィーは、例のクレスト仲介人と連絡を取った。
「あんたらの仕業か?」 「どういうことだね?」 「データベースに私の請けた覚えのない依頼ばかりある。全てクレストの依頼だ。」 「ああ、そのことか・・・」 仲介人は落ち着いた声で続ける。 「君のレイヴンランクを1位にするのには、苦労したよ。」 「私はランク1位など望んでいない。」 「アグラーヤにはよく活躍してもらった。」 「アグラーヤ?何故そこで彼女の名前が出てくる?」 「彼女は元から、我々の専属レイヴンなのだよ。」 「どういうことだ?」 「だから言っただろう?彼女は我が社の専属レイヴンだ。」 「それとこれと何の関係がある?」 「君の機体を拝借して、彼女に我が社の依頼をこなしてもらっていただけだよ。」 「なんだと!?」 ジノーヴィーは思わず声を荒げる。 「データベース介入などに少々手間取ったが、君の機体のおかげでアグラーヤの存在は表に出ないで済んでいるよ。」 クレスト仲介人は相変わらず落ち着いた様子だ。 「私をアークから引きずり出して専属レイヴンに仕立て上げるつもりか?」 「そんなつもりはない。何か問題でもあるのかね?」 「あんたらが私の機体を使ったせいで、私に専属契約の疑惑がかかっている。」 「そうか、すまない。」 「賭けの話はなしだ、もう私の機体を使うな!」 ジノーヴィーはそう叫び、通信を一方的に切った。 まさかこんなことになるとは思っていなかったが、こうなってしまえばもはや成り行きに任せるしかない。 |
アリーナでの試合から1ヶ月程度が経ったある日、ジノーヴィーの元へ1通のメールが届いた。
[Title:(重要)専属契約警告] [From:レイヴンズアーク] [あなたには、クレスト社との専属契約の疑惑があります。] [他クライアントと比べ、クレスト社との依頼受諾数が著しく多いのが原因となっています。] [このような状況が続くのであれば、レイヴンズアークからの追放も検討しなければなりません。] [以降、秩序正しい依頼の選択を期待します。] ジノーヴィーは賭けのことなどすっかり忘れ、依頼をこなしていた。 しかしクレスト社との依頼ばかり請けていた覚えはない。 アークのデータベースへアクセスして自分の依頼受諾履歴を確認すると、受けた覚えのない依頼が山ほど履歴に残っていた。 「どいうことだ、これは!?」 思わず叫びだしたあと、あのときの賭けのことを思い出し、レイヴンランクを確認する。 レイヴンランクは1位になっていた。 2位との圧倒的な差をつけて。 |
アリーナでの試合から1ヶ月程度が経ったある日、ジノーヴィーの元へ1通のメールが届いた。
[Title:(重要)専属契約警告] [From:レイヴンズアーク] [あなたには、クレスト社との専属契約の疑惑があります。] [他クライアントと比べ、クレスト社との依頼受諾数が著しく多いのが原因となっています。] [このような状況が続くのであれば、レイヴンズアークからの追放も検討しなければなりません。] [以降、秩序正しい依頼の選択を期待します。] ジノーヴィーは賭けのことなどすっかり忘れ、依頼をこなしていた。 しかしクレスト社との依頼ばかり請けていた覚えはない。 アークのデータベースへアクセスして自分の依頼受諾履歴を確認すると、受けた覚えのない依頼が山ほど履歴に残っていた。 「どいうことだ、これは!?」 思わず叫びだしたあと、あのときの賭けのことを思い出し、レイヴンランクを確認する。 レイヴンランクは1位になっていた。 2位との圧倒的な差をつけて。 |
試合がスタートし、グリッド1,2共にリフトハンガーが解除される。
だが同じ新人レイヴンであるはずなのに、操作の差は歴然だった。 開始直後の過剰ブーストによる熱暴走でほとんど身動きが取れなくなっているグリッド1。 それに対しグリッド2はうまくブーストを小刻みに吹かしながらグリッド1への距離を詰める。 徐々に距離を詰めていくグリッド2に対し、グリッド1はライフルを乱射。 しかし1次ロックやノーロックばかりで長距離から発射される弾のほとんどは、グリッド2の細かい機動には当たらない。 グリッド2はその応酬に、半固定目標となっているグリッド1へとミサイルを次々と撃ち込む。 グリッド1のコア迎撃機能がミサイルを撃墜していくが全て撃墜できるわけもなく、何発も被弾しAPが削られる。 ある程度距離が詰まるとグリッド2はミサイルをパージして軽量化し、ライフルを撃ちながらさらに距離を詰める。 距離が詰まった分グリッド1のライフルも命中しやすくなったが、ミサイルで受けたダメージを取り返すには足りない。 そして極限まで距離が詰まったとき、グリッド2がブレードでグリッド1に一閃。 『グリッド1、行動不能。グリッド2の勝利です。』 そのアナウンスと共に会場は歓声とブーイングに包まれた。 新人とは思えない見事なパフォーマンスだ。 「君の勝ちだな。」 「ああ。同郷であの実力、戦場では出会いたくないものだな。」 「では、君のレイヴンランク1位は我々が保証しよう。」 「楽しみにしてるよ。」 冗談半分に聞いていたジノーヴィーは皮肉交じりにそう言って席を立った。 |
「どちらにしろ、依頼には困らないはずだ。悪くない話だと思わんかね?」
「アークでは専属契約が禁止されていることは知っているはずだ。何故アーク所属の私に専属の話を持ちかける?」 「それは君の実力を我々が見込んでいるからだよ。」 「私の、実力・・・」 「まあ、君が不満ならそうだな・・・」 クレスト仲介人は少し考え込む。 「君が勝てばレイヴンランク1の保証、負けた場合は何もなし、というのはどうだ?」 「受けてみようか、その賭け。」 「その返事を待っていた。さて、どっちに賭ける?」 クレスト仲介人は2枚の資料をジノーヴィーに差し出す。 「これは今回の試合に出るレイヴンのプロフィールだ。どちらかを選びたまえ。」 ジノーヴィーは資料に目を通す。 試合は初期機体で戦いあう単純なものだ。 どちらも活躍を聞いたことのないレイヴンだったが、ジノーヴィーの視線は片方のプロフィールに釘付けになる。 アグラーヤ、それがその女性レイヴンの名前だった。 「同郷のレイヴンか・・・」 思わず声を漏らす。 「決まったかね?」 「ああ。同郷出身ということで、アグラーヤに賭けよう。」 「では私はもう片方のファントムシーフか。」 『観客の皆様、長らくお待たせしました。』 『選手入場。グリッド1、ファントムシーフです。』 『選手入場。グリッド2、アグラーヤです。』 フィールドにリフトでACが上昇し、モニターにそれぞれのエンブレムが表示され、歓声が響く。 『ではこれより、ビギナーマッチを開始します。』 『Ready.... Go!!』 |
「新人レイヴン同士の試合か、昔を思い出すな・・・」
アリーナの観客席でジノーヴィーはつぶやく。 この頃のジノーヴィーは、レイヴンとしてはまだ中堅レベルの実力だ。 しかし最近になってレイヴンの活躍が活発になったこの地区では、上位ランカーとしての地位を確立している。 「調子はどうかな?」 隣に座った男が話しかけてくる。 「ん?クレストの依頼仲介人さんか。この度はどうも。」 ジノーヴィーが今この席にいるのは、この仲介人の計らいだ。 「いや、礼には及ばないさ。クレスト招待枠が余ってたのでね。」 「余り物の押し付けか・・・」 ジノーヴィーの機嫌が少しだけ悪くなる。 「そういうわけじゃない。この試合に招待するに相応しいレイヴンが他にいなかったのだよ。」 「招待するに相応しい?」 「いや、これは君に話しても仕方のないことか。」 「・・・」 追求しようかとも思ったが、信頼関係に支障をきたしたくなかったので黙り込む。 「それよりだ。少し賭けをしないか?」 「賭け?」 「そう、賭けだ。」 「何を賭ける?金ならパスだ。」 「勝っても負けても、悪いようにはしないさ。君は何も出さなくていい。」 「どういうことだ?」 「君が勝った場合、君のレイヴンランクが1位になるのを約束しよう。」 レイヴンランク1位。この地区での最高の地位だ。 数多くの依頼を果たし、依頼主からの信頼も得なければ到達し得ない高み。 「私が勝った場合、君には我々の専属レイヴンになってもらおう。」 「専属だと?」 思わず聞き返す。 |