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やがて俺が現れるとどの勢力も撤退を始めるようになった。
撤退をし始めても、命乞いをされても、容赦なく潰す。 陣営に関係なく潰す。 これをひたすら繰り返した。 頼れるのは自分自身と、昔使っていたパーツや弾薬の残りのみ。 死ぬことなど怖くなかった。 殺しているんだ、殺されても文句はない。 誰かに振り回されて殺しているんじゃない。 自分の意志で殺しているのだから。 ~ やがて物資の関係でACの修理や補給が出来なくなるころ・・・ 勢力間の争いがなくなった。 争えば容赦なく俺に殺される、そんな認識が共通でできたのだろう。 これはもう革命だろう。 (俺は革命に成功したんだ・・・) そう思った俺は、ボロボロで使い物にならなくなったACを乗り捨てた。 もうこいつに用はない。 ~ 俺は身分を偽って普通の一般市民としての生活を始めた。 その間、新興企業が争いはしないものの徐々に力をつけていった。 ~ PR |
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(シーラ・・・)
俺はシーラの家をカメラでよく見渡した。 逃げ遅れたのか、細々と燃えるシーラの亡骸が転がっていた。 「ま、次に会うまでせいぜい楽しむことだな。」 そう言ってエドも撤退を始めた。 「・・・死ね。」 俺はライフルとミサイルをエドのMTに撃ち込む。 「ぐっ!戦う気あったのか、あんた・・・?」 エドが動揺しているのが通信から伝わってくる。 必死に逃げようとしているが、エドのMTの機動性は低い。 「今わかったよ。」 「待ってても何も変わらない。」 「何かを変えるには、結局は殺すしかないのさ。」 俺はそう言ってブレードでエドの機体を斬りつける。 何度も、何度も・・・ やがてエドの機体は爆散し、跡形もなく消え去った。 気がつくと、他の4機はもうどこにも見当たらなかった。 ~ それから数日後・・・ 俺はACを組み直し、各地の勢力間争いに介入を始めた。 もう二度と「殺さない」などとは言わない。 パイロットが確実に死ぬように戦った。 争いの火種となるであろう施設も片っ端から破壊した。 |
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「お前に殺せるか?」
「殺せるさ。」 「あんたは俺のことを知りすぎている。」 「生きててもらっちゃ、困るんだよ。」 「どういう気の変わりようだ?」 「簡単さ。新しいクライアントと契約を結んだのさ。」 「昔のあんたと同じだよ。」 「金さえ入れば、誰にだってついていく。」 「所詮、情報屋の世界なんて金が全てさ。」 「で、俺が生きてると困ると?」 「そうだ。あとは・・・」 エドはバズーカを別の方向に向ける。 「あのシーラとかいう女もな!」 そう言ってバズーカを放った。 その先にあったもの・・・ それはシーラの住む家だった。 「・・・」 何が起こったか把握した俺はライフルでMTのバズーカを順番に撃ちぬく。 本当はMTを破壊してしまいたかった。 しかし昔の癖は消せなかった。 「まだそんなこだわりがあるのか。」 「まあいい、武装がやられちゃ不利だ。撤収するぞ!」 エドがそう言うと、他の4機は撤退を始めた。 |
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(ひどい有様だ・・・)
もう村の大半が焼き払われていた。 恐らく焼き払われた場所には生存者はいないだろう。 襲撃部隊は旧クレスト製の汎用重装MTが5機だった。武装は全機バズーカのみ。 1機だけ後期型の白い機体がある。 恐らくあれがリーダー格なのだろう。 「貴様ら、この村に何の用だ?」 白い機体に通信を入れる。 「ACでお出ましか?驚いたな。」 通信が返ってくる。 この声は・・・ 「・・・エドか?」 信じがたいが、そう聞き返した。 「そうさ。俺だよ、レイヴン。」 「そいつらは何だ?」 エドを含めた全機が俺に武器を向けてくるが、動かずにエドに聞く。 「俺が雇った武装勢力さ。あんたのくれてた報酬のおかげで楽に話に乗ってくれたよ。」 「それで何の用だ?場合によっちゃお前でも許さんぞ。」 「何の用かって?」 「あんたを消しに来たのさ。」 「俺を消しに来た?」 「どうせ生きてても何もしないんだろ?」 「だったらさっさと死んじまえよ。」 この間まで依頼を請けさせようとしていた男と同じ人物とは思えない。 |
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そんな日々がしばらく続いた後、村が謎のMT部隊に襲われた。 この村に奪う価値のあるものはない。 だから防衛部隊など存在しない。襲われれば蹂躙されるのみだ。 襲撃に気づいた俺は、自宅裏の倉庫へと向かった。 住処を荒らされて気持ちのいいものではないからな。 倉庫にはレイヴン時代に使っていた大量のACパーツが保管してある。 人目を忍んで運び込むのは苦労したが、勢力間争いに使われたくはなかった。 使うことなど考えてはいなかったが昔からの癖で初期機体の69式の形に1機組んであったので、それに乗り込む。 [メインシステム 戦闘モードを起動します。] 整備などしていなかったが、どうやら動くようだ。 機体の状態も良好、撃つ弾もある。 昔の勘を頼りに操縦し、MT部隊のほうにACを向かわせる。 |
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「レイヴン、いる?」
今度は元オペレーターのシーラが来たようだ。 シーラもこの山村に住み着いている。 わざわざ俺を探し出してまで住みに来たのだ、しつこい女だ。 「何の用だ?」 「もう仕事はしない、何度言えばいい?」 「もっと金が欲しいのか?」 「金ならいくらでもくれてやる、帰れ。」 「そんなこと言わないで、レイヴン・・・」 シーラは悲しげな表情でこっちを見つめている。 「何だ?またお前の操り人形になれってか?」 「俺の意志に関係なく、また誰かを殺せというのか?」 「・・・」 シーラは何も言わない。 「俺が仕事中にレイヴンを殺したとき、お前は嬉しそうにしてたよな?」 「結局、お前は金が欲しかっただけだろ?この守銭奴が。」 「・・・ごめんなさい。」 シーラはそう言って帰っていった。 何をしに来たんだか。 毎日これでまだ懲りないのかね、あの女は。 |
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「レイヴン、新しい仕事だ。」 情報屋のエドが俺の家を訪ねてきた。 (また来たか・・・) 「・・・帰ってくれ。」 俺はエドのほうを見もしないで、そう返事をする。 「どうしてだ。どうして急に依頼を請けなくなった!」 「殺しすぎたんだよ、俺は。」 「何をいまさら?」 エドがそう思うのも当然だ。 今まで仕事という建前で散々殺してきたんだからな。 「何度言わせる気だ?俺はもう仕事はしない。そう言ったはずだ。」 「ああ、聞いたさ。だが俺は納得していない!」 「別に納得してもらおうなどとは思ってない。」 「は、相変わらずだな。邪魔したなレイヴン。」 悪態をつきなが、エドは出口へ向かう。 「・・・定期的に十分な報酬は出してある。」 「何もせずに金が入る、こんな割りのいい仕事はないだろう?」 去り際のエドに向け、俺はそう言った。 「まあな、おかげさんで不自由なく暮らせてるよ。」 「何がラストレイヴンだ、何がドミナントだ!」 エドはそう怒鳴りながら俺の家を出て行った。 (・・・やれやれ。) まあいつものことだった。 どうせしばらくすればまた来るだろう。 |
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思い返せばエドに依頼を提供され、シーラに背中を押されて戦場に赴いただけの日々。
結局、俺は周りに流されていただけだと気づいた。 依頼という建前で殺しをさせられていただけだった。 俺が殺した数多くのレイヴンや各勢力の兵士たち・・・ 振り回されていただけとはいえ、俺が彼らを殺した事実に変わりはない。 俺が殺したのだ、殺したかったわけでもないのに。 もう自分の意志に関係なく、殺しなどしたくない。 だから俺はもうレイヴンとしての仕事はしないと決めた。 誰かに振り回されて利用されるのはもう嫌だった。 |
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インターネサインが破壊さえ平和となった世界。
復興が進むにつれ、元企業の集合体であるアライアンスが崩壊、再び企業間の争いが活発化。 レイヴンの仕事はなくならなかった。 最初は嫌々ながらも依頼をこなした。 なるべく敵を殺さないように注意しながら。 しかし俺が依頼をこなすことは、火に油を注ぐようなものだった。 各勢力間でのMT同士の争いだったのが、お互いに対AC戦闘を考慮した、さらに激しい争いになった。 俺が依頼をこなすごとに争いは激化していく。そして人が余計に死ぬ。 それに気づいたとき、俺は依頼を請けるのをやめた。 俺が殺さなくても、結局は死ぬのだ。 奈良もうこんな世界などどうでもいい。 そして世間の目を逃れるために、山奥の小さな山村で隠居生活することにした。 ここには何もないが、生きるに不自由しないだけの金はある。 まだ若いが静かに余生を過ごす、それだけできればよかった。 |
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俺は「最後に残ったレイヴンだから」と"ラストレイヴン"と呼ばれた。
パルヴァライザーとインターネサインを破壊し、"ドミナント"とも呼ばれた。 そして賞賛され、各方面から多額の謝礼金が贈られてきた。 しかしこれは結果がそうであっただけで、俺は単に依頼を果たしたのみだ。 こんな称号や金がほしくて依頼を請けていたのではない。 では何のために依頼を請けていたのか? そう問われると、俺は答えることが出来ない。 今まで何も考えずにいたのを実感した。 それと同時に自分が怖くなった。 インターネサインが破壊さえ平和となった世界。 復興が進むにつれ、元企業の集合体であるアライアンスが崩壊、再び企業間の争いが活発化。 レイヴンの仕事はなくならなかった。 最初は嫌々ながらも依頼をこなした。 なるべく敵を殺さないように注意しながら。 しかし俺が依頼をこなすことは、火に油を注ぐようなものだった。 各勢力間でのMT同士の争いだったのが、お互いに対AC戦闘を考慮した、さらに激しい争いになった。 |
