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(戦火は避けられんか・・・)
家の中に入り玄関の鍵を再び閉めてリビングへ向かいながら、Gファウストは考え込む。 「おじちゃん、顔怖いよ?」 リビングに入ると義孫が心配そうに見つめてきた。 「ああ、すまん。何でもないさ。俺も今ご飯食べるから少し待ってな。」 「うん。」 (この日常も、今日で終わりかも知れんな・・・) 朝食を食べながら、G.ファウストはそう考えていた。 PR |
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「で?伝えたいことは何だ?」
「アライアンス本部が、この近くに小規模な武装勢力の拠点があるとの情報を入手したのです。」 「武装勢力の拠点?」 ここは人気のない場所だ。武装勢力の拠点には手ごろだろう。 「はい。そしてその制圧・接収が近日中に行われます。」 「だからなんだ?この村は関係ないだろう?」 「拠点がこの村の近くにある以上、戦火がこの村に飛び火する可能性も否定できません。」 「なるほど、確かにそうだな。」 G.ファウストは納得しながらもこう続ける。 「だがもし仮にだ。俺がその武装勢力に通じていたらどうする?」 「関係ありません。大変失礼ながら、それも考慮した上で、あなたにこの話をお伝えしたのです。」 ジャウザーの顔は確信で満ちていた。 「彼らがいくら戦闘に備えたところで、アライアンスとの戦力差は歴然です。」 「確かにな。」 「それに彼らがこの情報を入手して武装放棄するのであれば、お互いに無駄な血を流さずに済みますから。」 「そうだな。だがあいにく、俺は本当にその武装勢力とやらは知らんのでな。交戦は避けられんだろう。」 「状況をご理解いただけたのならば、避難をお勧め致します。」 「悪いがそれはできんな。俺はこの家とあの義孫を守ると、友と約束しているからな。」 「そうですか。警告はさせていただきました、幸運を。」 「ああ。用が済んだならもう帰ってくれ。」 「ではこれにて。早朝より、失礼しました。」 「ジャウザー、お前はまだ若い。命を無駄にするな。」 「胸に留めておきます。」 ジャウザーは一礼をして去っていった。 |
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「誰か知らんが、こんな早朝から何の用だ?」
「早朝より失礼します。」 玄関を開けた先には好青年が立っていた。見ない顔だ。 「誰だ?」 「申し遅れました。私はアライアンス所属レイヴン、ジャウザーと申します。」 「アライアンスのジャウザーか。何の用だ?」 「お聞きしたいこととお伝えしたいことの、2つがあります。」 「先に質問を聞こうか。」 G.ファウストは玄関の外に出て鍵をかける。 「わかりました。今後のあなたの立場についてです。」 「俺の立場?」 「あなたもご存知とは思いますが、アライアンスとバーテックスの対立は激化する一方です。」 「そのようだな。」 「あなたは今は前線を退いているとしても仮にもレイヴン。あなたの出方次第では我々も対応を考えねばなりません。」 「俺はどっちにもつかん。」 「どちらにもつきませんか。独立レイヴンということでよろしいですね?」 「俺はもうレイヴンではない!ただの一般人の立場など、どうでもいいだろう!?」 G.ファウストは思わず声を荒げる。 「おじちゃん?」 義孫の声が玄関越しに聞こえる。 怒鳴り声を聞いて心配してきたのだろう。 「何も心配いらないさ。お前さんはゆっくりご飯をお食べ。」 G.ファウストは玄関越しに優しい声で義孫に語りかける。 義孫がリビングへ戻る足音を聞きながらジャウザーの方を向き直り、話を再開する。 「今の俺にはあの子がいるんだ。もう戦場には出向けんのだよ。」 「そうですか、わかりました。G.ファウストは既にレイヴンではない、報告はそういうことにしておきましょう。」 G.ファウストは非常に不快だったが、義孫を心配させないためにも感情を押さえ込んだ。 |
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「今日もおじいちゃんがきてたの?」
目をこすりながら、烏大老の孫が起きてきた。年は6歳くらいだ。 「ああ、だがまだ忙しいからなかなか会えないみたいだな。」 「おじちゃんは、僕と一緒にいてくれる?」 「もちろんさ。少し早いがご飯にするか。」 「うん。」 「よーし、じゃあお前も手伝え。自分で作ったご飯はうまいぞ。」 「うん。」 烏大老の孫の家事の手際はとてもいい。 全てG.ファウストが教え込んだものなのだが、飲み込みが非常に早いのだ。 (これならこの子1人でも生きていけるな。) 義孫の手際のよさを見ながら、G.ファウストはそう感じていた。 この子を1人にするつもりなど元よりないのだが、G.ファウストも烏大老も既にかなりの高齢なのである。 2人ともいつ老衰で倒れるかわからない。 しかも烏大老はまだ現役レイヴンだ、いつ死んでもおかしくはない。 2人がいなくなってしまえば、この子にはもう身寄りがない。 だからこの子が1人立ちできると確信が持てるというのは、非常に大事なことなのだ。 「おじちゃん、どうしたの?」 義孫が不思議そうな顔をしながら、G.ファウストに聞いてくる。 ずっと自分のことを見つめられているのに疑問を感じたのだろう。 「いや、なんでもないさ。お前なら大丈夫だ。」 「? 変なの!」 「ははは。さて用意も終わったことだし、食べるか!」 「うん!いただきます。」 「よし、行儀正しくてよろしい。では私もいただ」 G.ファウストも「いただきます」と言おうとしたのだが、玄関の呼び鈴が鳴った。 「誰だ、こんな早朝に。先に食べててくれ。」 朝食のお預けを食らい、不満げな表情で玄関へ向かう。 |
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明け方の人里離れた小さな村の小さな家で2人の老人が密会を開いていた。
「この情勢だ、お前はどうする?」 老人の1人、烏大老がもう1人の老人に聞く。 アライアンスとバーテックスの2大勢力に世界が分かれている今、組織の後ろ盾なしに生き延びるのは厳しい。 烏大老はバーテックスの主要幹部だ。 「俺はもう現役じゃない、どっちにもつかん。」 もう1人の老人、G.ファウストはそう返した。 2人は昔からレイヴンを続けていた老兵レイヴン仲間である。 G.ファウストは既に前線から身を引いていたが、烏大老はまだ現役だ。 「どっちにもつかんか。私はお前を殺したくはないのだがな。」 「確かにその可能性は否定できんな。だが、どちらもこんな小さな村に用はなかろう?」 「私もそうだと信じたいがね。」 烏大老はそう言いながら時計に目をやる。 「おっと、時間だ。悪いがもう帰らせてもらおう。」 烏大老は慌てて帰り支度を始める。 「そうか。たまには孫にも会ったらどうだ?」 「今日は時間がない、また今度になるな。孫をよろしく頼む。」 「バーテックス幹部は大変だな。あの子の面倒は任せておけ。」 少し間をおいて、去り際の烏大老にG.ファウストはこう続ける。 「死ぬなよ。」 しかし烏大老はそれに反応もせずに去っていった。 |
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解説とか
フロートって常に浮いてるよね、下部に常に熱出してそうだよね。 下部に熱が出てたら草木に致命的なダメージになりそうだよね。 そんなことを思って書いたお話。 |
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だが実は、彼女が気づいていないことが1つだけあるのだ。
接地が皆無のフロート脚部は常時弱くブーストを吹かしてる状態だから常に浮いていられるのだ。 弱くといってもACほどの質量のものを浮かべているのだから、当然そこそこの出力が必要で、共に熱も出されている。 これは人工物への影響は少ないが、か弱い植物にとってはその熱量は危険なのだ。 だから彼女がACを乗り回した地域に芽生え始めた植物があっても、実は彼女のACに焼き払われてしまっているのだ。 だが緑化活動に貢献できて喜んでいる彼女の笑顔の前には、誰もその悲しい現実を教えることはできない・・・ |
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ある程度資金がたまったらパルスライフルを購入し、ビルバオは本格的に活動を始めた。
フロート脚部は機動性が高いが、ビルバオは回避行動をしない。 回避したことで建物などが壊れ、その修理のために自然が壊されるようなことになってはいけないからだ。 同様の理由で無駄弾を撃たないように心がけ、機動性を生かして敵に攻撃させる暇を与えず短時間で撃破していく。 そのおかげで回避行動をとらなくても被弾率は低く、ミッション成功率は高かった。 順調に機体を買い換えていき、従来のコンセプトに加え軽量EOコアでプラズマキャノンを装備したACが出来上がった。 そして機体構成を変える必要のなくなった彼女はミッション成功報酬の大半を自然保護団体に寄付し始める。 彼女の稼ぐコームは今までの寄付金に比べれば莫大で、自然保護団体が行う緑化活動の規模も大きくなった。 彼女の活躍はレイヤードで話題になり、依頼の量も増える。 危険な依頼もあったがどれも順調にこなしていき、レイヤードの緑化もどんどん進んでいく。 |
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だがレイヴンとなった直後、彼女は頭を抱えた。
初期機体の武装に不満があるのだ。 左腕のレーザーブレードは許せるが、それ以外の実弾武器が許せない。 「弾薬費が少なくてお勧めです!」 とか機体説明の時に言われたが、実弾兵器を使うということは資源の無駄遣いをするということ。 だからコーテックス職員が止めるのを振り切って、ライフルとミサイルを売り払った。 緑を踏み潰してしまうであろう脚部も気に入らず、ブースターも一緒に売り払って接地なしの安価なフロート脚部に取り替える。 そして当然EN兵器主体の予定なのでジェネレーターをいいものに交換し、初期ジェネレーターは売却。 そうして出来上がった「エコで自然に優しい」をコンセプトとした少しめちゃくちゃな機体。 さすがにブレードだけというのが危険なのはビルバオも覚悟していたので、まずは低収入の簡単な仕事を繰り返していく。 |
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そんな日々を過ごしていたら、レイヴンの仕事はハイリスクだが莫大なコーム収入があるという話を耳にした。
レイヴンの仕事、それは勢力間争いへの加勢だ。 泥沼化しがちの争いの片方に加勢し、その圧倒的戦力で争いを終わらせる。 争いに加担してしまうが、それで争いを早期終結させればそれ以上自然は破壊されない。 実に素晴らしいことではないか。 そう思った彼女は、レイヴンの管理を行っているグローバルコーテックスへ試験の申し込みを行った。 争いに加担するということは死ぬ可能性もあるということだが、自然を守るために死ねるなら本望だ。 だから試験当日までがんばって予習をし、試験にもちゃんと合格し無事レイヴンとなった。 |
